最近知ったのだが,Hasselbladが数年前にlunarというカメラを発売していたようだ。

汎猫様の「晴れ時々ジャズ、雨のちカメラ」の記事にこのカメラの分かりやすい説明があるのでご存知でない方はそちらを見ていただきたい。

私がこのカメラを一瞥したときから良い印象は無かったが,このカメラの実態を知るにつれ,私の知る中で最も醜悪なカメラだと考えるようになった。

醜悪というのはデザインがひどいというのではなく(個人的には歓迎しかねるデザインだが),機能美というか,中身と外装のちぐはぐさが酷いからである。改めて書くまでもないが,中身はSONYのNEX-7そのものである。それを,「高級」な外装に入れたものである。「高級」な外装は,機能に関係の無い部分に宝石やクリスタルガラスを使用したりと成金趣味にしか感じられない。正直,このようなカメラを発売するハッセルブラッドのブランド価値を損なっているように感じてしまう。そして価格が高すぎる。ライカのようにボディやレンズの設計を自社で行い,独自の理念で高級なカメラを発売するのは良い。だがこれは,他社の(しかも圧倒的に安価な)製品の外装を変えただけである。メーカーのカメラに対する理念が感じられない。別にOEMを否定するわけではないが,これは釈然としない。
質実剛健な中盤カメラを生産していたハッセルはどこへ行ったのだろうか。

私は,カメラは実用品だと考えているので,実用的な価値とは無縁の装飾にこだわりすぎたカメラは評価しかねる。そもそも,このカメラはどのような人物をターゲットにしているのかよくわからない。当然,商業的にも失敗であったようだが。カメラとしての本質の価値とはかけ離れている。そもそもこのカメラを発売したことのメリットがハッセル・ソニー・ユーザーのどこにも無いように感じてならない。

同様の理由で,コンタックスのTシリーズ等は好きになれない。チタンやサファイアグラス等が外装の分かりやすい部分に金をかけている一方,肝心なカメラとしての耐久性は今一つと言わざるを得ないからだ。lunarよりははるかにましだが。

また,様々なメーカーでまれに限定生産される金メッキされたカメラ等も非常に醜悪だと思っている。
実用的な価値の無いカメラを意図的に少数のみ生産するのはいただけない。とはいえ,メーカーからすれば利益率の高い美味しい商売なのだろうが。ただ,数十年前から同様のカメラが偶発的に発売されることを鑑みると一定の需要はあるのだろう。個人的には成金風の悪趣味なカメラはタダでも使いたくないが。限定色のカメラは希少価値のわりに需要が無いため大した価値は無いという噂を聞いたこともあるが。
意図的に希少価値を煽る限定商法は嫌いだ。意図的でない偶発的な原因で少数しか生産されなかった製品は興味深いが。とはいえ,限定商法がなくならない事実はそれが効果的であることを伝えている。